今年の夏は私の周りでもたくさんの方が亡くなりました。
人はいずれ死ぬものですが、寂しいものです。ですが、私には昔からある価値観というものがあります。
それは治療家としてはあるまじき価値観なのかもしれませんが、それは普遍的なものなので、それを無視して、戯れを言いながら、この仕事をしていくわけにはいかないな~と改めて思った朝です。
それは何でか?というと、6月7日に厚生労働省が公表した2018年の「人口動態統計月報年計(概数)の概況)というものを眺めていました。
それによると、2018年に死亡した人は、136万2482人だったようです。出生してきたのは91万8397人ということですから、全体で44万4085人の人口減少が見られたということです。人口減少が加速度を増して進んでいるということでしょう。
まあ、江戸時代は人口3000万人だったそうですから、人口が爆発的に増えているので、少し減るくらいで調度いいという見方もあるようですが、とりあえず現象傾向です。
さて、その死因なのですが、第一位は悪性新生物で37万3547人、第二位は心疾患(高血圧性の除く)で20万8210人、第3位が老衰で10万9606人となっています。
昨年までは脳血管障害が第三位だったのが、第4位だった老衰と入れ替わったようです。これからは老衰が死因の大きな原因の一つとなると考えられています。
夏あたりからというか、随分前から私はある違和感を感じていました。
それは高齢の方を診ていく時によくよく感じています。
みんな元気で長生きしたい、周りもそう願うことは当然のことだろうと思います。ですが、治療してもらいに来ている人が、通いさえすれば、良くなっていくもの。よくならないのは治療が悪いからというようなことを言う高齢者やその周りがたまにいます。
これは私の処に対してもそうですが、病院に対してもそういう傾向が強いです。あそこに行ったけど、よくならなかった。何にもしてくれなかった。そういう事を口にするのです。
そういう人たちと治療をする側、私とは価値観が大きく違うのかなと思うのです。
こういう人はアドバイスを求める割に、アドバイスを聞かない、実践しない。すぐに我流に走る。それと治療の方向性という大前提が違うのです。
これはガン患者と治療側の価値感というか、治療の評価基準にも大きく乖離があると同じことだと思いますし、その例えを使うとよくわかると思います。
それはガン患者は治る、しかも根治、つまり完全にガンが治るということを治療の最終目的にしています。
しかし、治療側はガン患者の予後が伸びることを目的としていると言います。
でも、そこは言わないんですよね。いつまで経っても、それは言わないから患者と治療側の間に大きな溝が生まれてくるんじゃないかな?と思います。
私の場合でも膝が痛いとか、肩が痛い、腰が痛いとかでさえも、長い時間かけて、その状態になっているのにも関わらず、すぐに治ったということもあるから、そこの部分に心を動かされて、期待して、勝手に裏切られた気になって、嫌な思いをさせてしまうなんてこともあったりするわけです。
それが内臓や気力の問題であるのなら、尚更、長くかかるし、完全に元の通りにピンピンになれるという事は無理だと頭ではわかるはずですが、そうはいかないのが人の心理です。
しかも、それを初めにきちんと伝えたとしても、それはなかったものとして、治療を受ければ、よくなるもの。そこしか焦点が合わせることができない人が余りにも多いな~と思います。
最初に人口現象に触れたように、これからは人がどんどん死んでいきます。人は死に向かって歩いているのです。
統計でも明らかになっている通り、老衰が大きな死亡要因になってきているのです。ここは本当に事実として認めておかねばならないし、病気で死んでいくばかりではなく、老衰というものがあるということを認識しておく事が大事ではないかと思います。
もう80歳過ぎたら、儲けた人生だった、みんな!ありがとうと言って、旅立つ覚悟を日頃からしておくくらいで、少なからずいる現状維持を望むくらいの気持ちの人の方が予後も人生も楽しそうで良いような気がします。
また、ちょっと違う角度で大事なことを伝えておかないといけません。死亡した人の24.7%は悪性腫瘍物が死因です。これが3人に一人がガンになって死ぬという触れ込みになっているのですが、実は70歳以上はガンによる死亡率は急激に下がっていくのです。
そうです。ガンで死にやすいのは、実は40代~60代なんです。ここは何とかしたいな~と思います。なんちゃってガンに引っかかって、免疫を抑制されて、死んでいくのも辛いし、本当のガンになって、加速度的に死んでしまうのも辛い。この年齢は家族が大きくなっていく中で色々とお役目が多い年齢です。
だからこそ、病気に罹ってしまう前に、そうなる前に身体のこと、食べ物のこと、メンタルコントロールについては早いうちから、元気な時から気にかけて欲しいと僕は思うんです。
それから70歳以上のがん患者の治療方針には若い人と同じではないやり方がもっと出てきても良いような気がします。ここらへんはまだよく理解できていないので、書くまでには至りませんので、これからも情報収集していきたいと思います。
今回のコラムは高齢者批判をしているわけではありませんが、やはり肉体には期限があることを自覚して、治療に勤めて欲しいと思いますし、若い人も高齢者も充実して生きていってほしいと思いますし、そのお手伝いをしていきたいと思うんです。
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